公務員は「お堅い職業」の典型です。したがって、公務員は「清廉潔白」でなければならないようなイメージがあります。また、民間企業に比べ収入が安定していることも「借金は良くない」というイメージを増長させています。
しかし、公務員でも「人事院勧告」で突然給料が減ることがあります。また、他人の借金の保証人になって借金を負担したり、仕事のストレスでパチンコなどに依存してしまうこともあるでしょう。公務員だから「債務整理に躊躇する」という方は、実際にも少なくありません。しかし、公務員の方こそ、早期に債務整理すべきです。
それでは、公務員の方の債務整理の方法について、説明していきます。
目次
債務整理しても公務員はクビになりません
「債務整理したら公務員をクビになる」と思い込んでいるために、債務整理をためらっている方は意外と多いようです。しかし、公務員は、自己破産しても免職されません。個人再生、任意整理は、当然問題になりません。
公務員が懲戒処分(免職・降任・停職・減給・戒告)されるのは、以下の場合に限定されます。
国家公務員の場合(国家公務員法82条) | 地方公務員法(地方公務員法16条) |
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借金の問題は、「公務員としての信用を失墜させた」として上の③の場合に該当すると考える人がいるかもしれません。しかし、③のケースは、公務員の立場を利用した犯罪行為を行った場合が典型例とされています。仮に、ギャンブルや風俗通いが原因で借金をしてしまった原因でも、公務とは無関係な私生活が原因で懲戒処分される可能性はかなり低いです。
また、公務員の欠格事由は、下記のとおりになります。
国家公務員の場合(国家公務員法82条) | 地方公務員法(地方公務員法16条) |
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以上の欠格事由に、「破産者」は含まれていません。したがって、自己破産しても、「懲戒(免職)されること」はありません。また、「破産者が公務員になること」も可能です。そもそも「破産者」でいるのは免責確定までの数ヶ月の問題ですので、破産と任用はほぼ関係がありません。
「職場に居づらくなる」ことはある
公務員は、「お堅い仕事」であることから、「消費者金融に多額の借金があること」が職場に知られれば、「職場に居づらくなる」ということはあるかもしれません。
また、公務員には「高度の守秘義務」や「高い倫理保持」が求められる業務もありますので、「借金があること」で配属先に影響がでることがないとはいえません。配属先が制限されれば昇進に影響する可能性もあります。
公務員に限ったことではありませんが、「借金していること」は「誰にも知られたくない」ものです。早期に債務整理することで、「誰にも知られず借金の問題を解決すること」は可能です。
公務員が債務整理する方法
債務整理には、次の4つの方法があります。
- 将来利息の免除して分割払いをやり直す「任意整理」
- 裁判所で任意整理する「特定調停」
- 借金の一部を3年間で返済する「個人再生」
- いまある財産で全ての借金を清算する「自己破産」
返せない借金の解決方法は自己破産しかないと思っている人もいるようですが、実際にはたくさんの解決方法があります。
債務整理の方法のそれぞれについては、下記の関連記事で説明しています。
共済組合からの借入れがあるときには注意
「共済組合から借入がある」場合には、注意が必要です。共済組合と勤務先は、別の団体であるとはいえ、密接なつながりがあります。もちろん、共済組合の担当者にも「職務上知り得た秘密についての守秘義務」があります。
しかし、共済組合からの借入を債務整理すれば、「債務整理していること」が勤務先にバレてしまう可能性は、消費者金融やカード会社の債務整理に比べてはるかに高くなります。
自己破産や個人再生は、「全ての債権者を同時に対象」にしなければなりません。したがって、共済組合から借入があるときには、「自己破産・個人再生を申し立てたこと」が必ず共済組合に通知されます。
他方で、任意整理、特定調停は、「債権者と個別に話し合う」手続きなので、共済組合から借入があっても、「共済組合を除外して」債務整理することができます。
公務員の債務整理は「任意整理」が一番
「職場に知られることなく」債務整理する方法としては、弁護士・司法書士に依頼して「任意整理」することが最もおすすめです。
任意整理であれば、「整理する借金」を選ぶことができます。たとえば、共済組合や住宅ローンは債務整理せずに、消費者金融や信販会社だけを債務整理することができます。
任意整理は、「私的な話し合い」なので、他の手続きのように、裁判所に提出する書類の作成や裁判所への出頭、利用条件もありません。
また、弁護士・司法書士に任意整理を依頼すれば、債権者との交渉はすべて弁護士・司法書士が窓口となって行います。したがって、債権者から勤務先に連絡がくることはありません。下記の記事で詳しく説明していますが、債務整理を弁護士・司法書士に依頼すれば、債権者は債務者に直接連絡することを禁止されるからです。
多少多額の借金でも公務員であれば任意整理できる
任意整理は、「将来の利息(と遅延損害金)だけ」が免除されます。したがって、借り入れた元金は減りません。そのため、一般のお勤めの方であれば「借金が多額」のときには、任意整理が難しいケースもあります。
しかし、公務員は、他の職種に比べ「収入と地位」が安定しています。そのため、多額の借金でも、返済回数を増やして(返済期間を延ばしてもらう)もらう交渉がしやすいのです。たとえば、240万円の借金であれば、一般的な任意整理(3年返済)では、毎月約7万円の返済になりますが、5年の返済であれば毎月4万円になります。
特定調停はおすすめできない
特定調停も共済組合を除外して債務整理できる方法です。しかし、特定調停は、任意整理に比べて返済額が多くなることが多いため、あまりおすすめできません。
また、特定調停は「平日・日中に」開催される調停期日に出席しなければいけません。「職場に知られたくない」ことを優先するのであれば、「年次休暇を取得して裁判所にでかける」ことは避けた方が良いでしょう。
弁護士や司法書士に代わりに出席してもらうことも可能ですが、弁護士・司法書士に依頼するのであれば、特定調停ではなく任意整理をするべきです。
なお、特定調停については、下記の記事で詳しく説明しています。
任意整理が厳しければ個人再生
任意整理では借金を返しきれないときには、個人再生を利用します。個人再生では、「借金の元金が減額される」ので、任意整理よりも返済額が減ります。先の240万円の借金であれば、最大100万円まで減額される(毎月28,000円の返済)可能性があります。
また、「住宅ローン特則付き」の個人再生手続きを利用すれば、「住宅ローンの残った自宅を手放すことなく」消費者金融やカード会社の借金を整理できます。
さらに、「債権者との関係が悪い」ケースでは、任意整理による債務整理が難しい場合があります。しかし、公務員であれば、個人再生のうちの給与所得者等再生も利用可能です。給与所得者等再生では、「債権者の同意がなくても」債務整理可能です。詳しくは、下記の記事を参考にしてください。
ただし、個人再生の利用には、次の点で注意が必要です。
- 共済組合から借入がある場合には、除外できない
- 個人再生では、3回の官報公示がある
- 資産がある場合には、借金が減らない可能性がある
個人再生では、共済組合を除外できないこと、官報公示があることが、公務員の方が利用する際には大きなネックになります。
なお、個人再生については、下記の関連記事でも詳しく説明しています。
公務員は自己破産する必要がない
ここまで、公務員が債務整理する方法についてお話してきました。公務員は収入と身分が安定しています。この点は、他の職業に比べて圧倒的に有利です。
したがって、公務員の方であれば「ほとんどの借金」を自己破産することなく解決することができます。そのため、この記事でも自己破産についてはほとんど触れていません。
なお、「借金があることが勤め先に知られる」のは、債務整理したときではありません。債務整理を後回しにして、借金の問題が深刻になった場合に、「勤め先に借金がバレる」のです。
なぜなら、債権者が勤め先に連絡してくるケースは、「延滞の督促」と「新規借入時の在籍確認」以外にはあり得ないからです。したがって、「返済のために借金を重ねる」自転車操業は「やってはいけない」ことの代表例です。
また、公務員は「借入限度額」が高く設定されていることが多いので、借金の問題を後回しにすることは、とても危険です。
「誰にも知られずに」借金問題を解決するには、早期に弁護士・司法書士に債務整理の相談をすることが最善の方法です。