個人再生手続きの一番のメリットは、手持ちの財産の処分を回避できることにありますが、個人再生では退職金の取扱いがどうなるかということについて、お話していきます。
目次
清算価値保障の原則
個人再生では、債務者の財産を処分しない代わりに、清算価値以上の返済を債権者に約束することが必要となります。清算価値とは債務者の財産を現在現金化したときの価値のことですが、個人再生の場合、この額よりも多く返済することが再生計画認可の条件となっています。
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個人再生での退職金の取扱い
個人再生では、その退職金が賃金(の後払い)に相当するとされるときには、清算価値に計上することになります。基本的には自己破産の場合と同じに考えれば良いということです。
【関連記事】58.自己破産した場合の退職金はどうなる?どれくらい回収されるのか
退職時期がまだ先という場合
現在退職した場合の退職金の額を会社で試算してもらい、その額の1/8に相当する額を清算価値に計上します。通常の差押え禁止となるのは、3/4までの額ですが、退職がまだ先であることを考慮に入れて、清算価値に計上する額が1/8となるのは、破産の場合と同じです。
退職時期が間近である場合・退職はしているが退職金を受け取っていない場合
これに対して退職時期が間近に迫っているという場合であれば、退職金からの回収は困難ではありませんから、退職金支給見込み額の1/8ではなく、1/4の額を清算価値に計上します。
退職金が既に支給されている場合
退職金の支給を既に受けているという場合には、それは退職金債権ではありませんから、現金、預金と同じ扱いをすることになりますので、全額を清算価値に計上します。
個人再生の場合には、退職金を受け取る時期に注意が必要
退職を1つのきっかけに債務整理をする場合や、債務整理のために退職を検討する場合もあると思いますが、個人再生による債務整理による場合には、退職金を受け取る時期に注意しておかなければいけません。上の図で比較すればおわかりいただけるように、既に退職していた場合であっても、退職金を受け取る前であれば、清算価値に計上する額は退職金の1/4の額で済みますが、退職金を受け取った後に個人再生を利用すると、受け取った全額を採算価値に計上しなければならなくなります。
清算価値の基礎となる財産は、再生計画認可の時とされていますので、個人再生の申し立ての時期からは一定のタイムラグがあることに注意しなければいけません。つまり、申し立てた際には、退職金を受け取っていなかったとしても、再生計画認可までの間に退職金を受け取ってしまったという場合には、受け取った退職金の全額を清算価値に計上する必要が生じるからです。
代理人がついている場合であれば、適切なアドバイスをもらえ、正しく対応してもらえるはずですが、本人申請で個人再生を利用する際には、この計上を間違えると再生計画の不認可となる可能性がありますから、慎重に対応する必要があります。
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