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債務整理は弁護士に頼まず自分一人でできるのか?調査してみた。

借金の問題を解決するための債務整理を行うときは、弁護士や司法書士に依頼をして行うことが一般的です。しかし、弁護士や司法書士に債務整理を依頼すれば、当然にこれらの専門家に支払う費用(報酬)が発生します。

 

借金の問題で悩んでいる方の中には、「弁護士や司法書士に支払う費用を負担できない」から、弁護士や司法書士に依頼することを諦めている人だけではなく、この費用を節約するために、自分だけで債務整理を行おうと思っている方もいらっしゃるでしょう。そこで、この記事では、専門家に依頼することなく、債務整理を行うことが可能かどうかについて考えてみたいと思います。

 

筆者紹介島さん司法書士資格を持つライター 債務整理関連の法律や手続きに詳しい 小池現役看護師 自分の体に強いコンプレックスを感じ、各種二重整形を始め様々な整形術・ダイエットを行った経験を持つ

「建前」としては、すべて自分だけでできます

まずは、建前の話からはじめたいと思います。債務整理の方法には、任意整理、特定調停、民事再生(個人再生)、破産といった手続きがあります。任意整理は、そもそも本人同士で交渉することですから当然可能ですし、裁判所で行うその他の債務整理も、建前としては、弁護士や司法書士に依頼することなくご自身だけで行うことは可能です。

 

たとえばドイツがそうですが、弁護士に依頼しなければ裁判所の手続きを利用できない(弁護士強制主義といいます)国もあります。しかし、日本では、本人訴訟主義という考え方を採用しているので、どの裁判手続きも弁護士に依頼することなく、本人だけで申し立てることが認められています。それならば、明日にでも裁判所にいって破産の申し立てをしようと思っても、そう上手くいかないのが、実際のところです。

 

下の表は、一般の方が専門家に依頼せずに、債務整理を行った場合の難易度の目安を簡単にまとめたものです。

 

手続きの開始 手続きの実行 手続きの結果
任意整理 × × ×
特定調停
個人再生 ×
自己破産(廃止)
自己破産(管財) × ×

実は任意整理が一番難しい

任意整理はそもそもが本人同士の話し合いで債務整理を行うというものですから、建前としては、当然に専門家に依頼しなくてもできるというイメージを持ちがちです。しかし、実際に専門家に依頼しないで債務整理を行おうとすると、最初の段階から躓いてしまうばかりか、逆に悪質業者の食い物にされてしまう危険すらあるのです。

まず交渉の席についてもらえない

まず任意整理であれば、貸金業者に対して債務者本人(あなた)が直接「毎月の支払いを減額してほしい」、「返済期間を延長してほしい」という交渉を持ちかけても、相手にされないことがほとんどでしょう。それこそ貸金業者の立場にしてみれば、その種のお願いの1つ1つを取り上げていれば、キリがないからです。ほとんどの場合は「弁護士さんを立てられてください」と言われてしまいます。

 

【関連記事】 20.任意整理によって借金が減る仕組みを専門家が分かりやすく解説

交渉も難しい

運良く貸金業者があなたとの交渉の席についてくれた場合であっても、貸金業者はその道のプロですから、専門的な知識をもっていない一般の方が普通に交渉してもまず太刀打ちできません。

任意の交渉は、裁判所の手続きより簡単だと思われている方は多いと思いますが、必ずしもそうではありません。訴訟は法律に基づいて実施されますので、手続きの進め方や訴訟でのやりとりの仕方・内容についてルールがあります。そのルールがあるために公平なやりとりをすることが最低限度保障されています。他方で、任意の話し合いはそのようなルールすらありませんから、交渉する当事者の実力差がその結果にそのまま反映してしまいます。

 

簡単に例えれば、裁判所の手続きであれば、裁判官がいますから正しくない結論になることは回避できますが、任意の交渉では裁判官はいませんので正しくない結果を押しつけられることだってあり得るのです(たとえば暴力団に交渉でやり込められることを念頭におけばわかりやすいでしょう)。

 

したがって、貸金業者との和解がまとまったとしても、弁護士や司法書士に任意整理を依頼した場合と比べてあなたにとって不利な結論となっている場合がほとんどでしょう。そうでない限り、貸金業者があなたと直接交渉するメリットがないからです。

逆に罠を仕掛けてくる場合があります

また、あなたとの直接の話し合いに応じてくれそうな貸金業者の中は、「現在の返済が厳しいなら、あなたに追加で融資をしてくれる貸金業者を紹介するから借金を1本にまとめたらどうか?」というような提案をしてくる業者があるかもしれません。しかし、これは悪質業者ヤミ金融を紹介される可能性もあります。弁護士や司法書士は、債務者(あなた)の防波堤の役割も果たしていますが、その防波堤がいないわけですから、悪質業者からしてみたらまさに鴨が葱を背負ってやってきたということなのです。

 

いずれにせよ、専門家に依頼することなく貸金業者と交渉するのは、それを「始める」ことすら難しいし、仮に交渉をはじめられたとしても、多くのリスクを抱えることになります。

個人再生手続きは、最も複雑です

個人再生の手続きは、住宅ローン特則を利用すれば住宅ローン付きの持ち家を手放さずに債務整理ができますし、債務それ自体を減額してくれる仕組みもあり、破産のような資格制限や権利制限も発生しませんので、非常にメリットの多い手続きです。

 

しかし、そのような(債務者にとって)メリットの多い手続きであるが故に、その手続きもかなり複雑です。また、申立書のほかにも、財産目録、清算価値算出シート、可処分所得額算出シート、財産状況等報告書、再生計画案、返済総額算出シートといった、作成の難しい書類を、不備なく、裁判所が設定した締め切りを守って、作成・提出しなければなりません(提出期限を守らなかったことで手続きが台無しになることがあります)。これは一般の方が自力でことはかなり困難です。実際にほとんどの裁判所が、個人再生の手続きを申し立てる際には、弁護士の代理人をつけることを推奨しています。

 

また、弁護士の代理人をつけずに個人再生を申し立てた際には、個人再生委員が必ず選任されることになっていますので、その報酬が発生するために、個人再生に必要な費用が増えますので、費用を節約するという専門家に依頼しないことのメリットそれ自体がなくなってしまいます。弁護士ではなく司法書士に関係書類の作成を依頼するという方法もなくはありませんが、その場合であっても、個人再生委員は選任されますので、手続きにかかる費用(予納金20~25万円)は節約できません。ですから、個人再生手続きを利用する際には、弁護士に依頼されることが最も理にかなっています

自己破産の場合

自己破産には、同時廃止とよばれる事件と管財事件とよばれる事件とがあり、それによって対応が異なってきます。

 

破産手続きを申し立てた債務者(破産者)に、めぼしい財産がない場合には、破産手続きは開始と同時に終了(廃止)となります。これを同時廃止とよんでいます。同時廃止の場合であれば、細々とした手続きはほとんどありませんから、弁護士や司法書士に依頼しなくても、ご自身だけで対応することは、不可能なことではありません。

 

他方で、管財事件の場合には、破産者(あなた)が保有している財産を裁判所が処分し、債権者に配当する手続きが実施されたりしますので、それに対応していく必要がありますので、同時廃止の場合に比べたら格段に難しいものになります。そもそも、管財事件となれば、破産管財人が選任されますので、その予納金(おおよそ50万円)の負担がかなり大きくなります。

 

個人の破産の場合には、少額管財とよばれる特例的な運用によって、手続きを管財事件よりも簡易迅速に実施することも可能です。この少額管財の場合の予納金は約20万円ですから、通常の管財事件に比べて予納金はかなり安くなりますが、少額管財の実施は、弁護士代理人がついていることが条件となっていますので、本人の申立て(や司法書士が書類の作成代行をしている場合も含まれます)では、実施されません。

 

【関連記事】 49.個人破産は同時廃止が原則ではない。少額管財となる6つ条件とは

東京での破産には弁護士への依頼が必須です
東京にお住まいの方の場合には、破産の申し立ては東京地方裁判所に行うことになりますが、東京地方裁判所では、原則として、弁護士代理人のいない破産申し立ては受け付けていないことにも注意が必要です。このような対応は、本人訴訟主義の観点から問題がないわけではありませんが、東京地方裁判所では、即日面接の運用があったり、少額管財の実施を原則にしているようなところがありますから、そのような事情を考えれば致し方ないのかもしれません。

専門家に頼まないメリットはあまりない

ここまでを簡単にまとめておけば、任意整理・個人再生・自己破産によって債務整理を行う場合には、弁護士や司法書士に依頼せずに自力で債務整理を行うことは、それが難しいというだけではなく、費用的な面でも、実はあまりメリットが大きくない(専門家に依頼しない分だけ手続きにかかる費用が高くなる)ことがわかります。

唯一の例外が特定調停

債務整理のための手続きのうちで、専門家に依頼することなく本人だけで対応することが現実的にも費用的にも可能なのが、特定調停による債務整理です。特定調停は、裁判所が選任した調停委員(会)が、申立人(あなた)と貸金業者との間にはいって、債務返済のための話し合いを取り持つ手続きで、裁判所を利用した任意整理ということができます。

 

特定調停の申立書や、必要となる書類も、個人再生や破産の際に必要となる書類に比べればかなり簡易なものですから、裁判所が案内している記載例を参考にしながら、自力で作成することも可能なものです。また、調停期日でのやりとりも、調停委員が中心となって進められますから、特段専門的な知識も必要となりませんし、現在では特定調停の多くが17条決定という方法で終了しますから、返済のための和解案も裁判所(調停委員会)で作成してもらえます。

 

しかし、特定調停にも問題がないわけではありません。特定調停の詳細については、下記の関連記事をお読みいただければと思いますが、現在の特定調停では、借金それ自体が減額されることはありませんし、毎月の返済額ベースでも特定調停の利用前と大きな違いがないというケースもありますので、注意が必要です。なお、現在では、特定調停の利用数は、減少傾向にあります。

 

【関連記事】
28.特定調停による債務整理の流れを専門家が詳しく解説|特定調停①
29.特定調停による債務整理の注意すべき7つのポイント|特定調停②
30.特定調停のやり方・具体的な手続き|特定調停③
 

まとめ

ここまで専門家に依頼することなく債務整理をすることは可能なのかということについてお話してきましたが、結論をまとめれば、専門家に依頼することなく債務整理をすることは、難しいということになります。専門家に依頼しないで債務整理を行うのは、専門家に支払う費用を節約するためであることがほとんどだと思いますが、費用面でみたときにも、専門家に依頼しなければその分手続きにかかる費用が高くつくことがほとんどですから、そのメリットがほとんどないということができます。

 

また、現在の特定調停の実務では、専門家に任意整理を依頼した場合よりも不利な条件で和解をすることになりますので、両者を比較したときには、専門家に任意整理を依頼した方が、最終的な負担額が小さくなるということも少なくないでしょう。

 

費用面のことだけが心配ということで、専門家に依頼できないというのであれば、分割払いに対応している弁護士に相談することや、法テラスに相談することなどで、費用の問題を解決できる場合もあります。いまでは、債務整理の相談を無料で行っている弁護士・司法書士がたくさんいますので、まずは無料相談を利用してみて、その際に、手元にお金がないということを率直に相談されることで、色んな可能性が開けてきます。

 

【関連記事】 14.債務整理にかかる「費用・料金」を専門家が徹底解説
 
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