借金の問題で悩んでいる人のなかには、貸金業者等からの借入だけではなく、親戚や友人からもお金を借りているという人も少なくないでしょう。貸金業者からの借金は債務整理で解決したいが、やはり友人からの借金だけは何とか返したいと考える人は当然たくさんいます。
任意整理の場合や、破産手続きの場合については、それぞれ別の記事で説明をしていますので、そちらをお読みいただくことにして、この記事では、個人再生の場合にどう考えたらよいのかということについてお話していきます。
【関連記事】21.任意整理で借入先によって対応を変えることはできるのか?優先弁済の例
55.破産時に友人や親せきからの借金はどうなるのか?債権者平等の原則
基本的なルールは、破産の場合と同じです
個人再生手続きでは、最低弁済額もしくは清算価値のいずれかによって、債務を返済することで、その額を超える債務の返済義務を免除する制度です。破産の場合には財産の処分によって残りの債務が免責されるわけですが、個人再生の場合には、この財産の処分が分割払いでの返済に置き換わったものと理解すればわかりやすいでしょう。
したがって、個人再生によって債務整理が行われた場合には、その債権者は、元本が減額されるという不利益を負わされることになります。そこで、個人再生の場合にも破産の場合と同様に、すべての債権者を対象とする必要がありますので、やはり友人や親戚の借金についても、破産と同じように届け出る必要があります。
ところで、任意整理によって借金を整理する場合には、どの債権者と任意整理をするかは自由ですから、友人の借金だけ特別扱いをすることも不可能ではありません。個人再生は、原則3年の分割払いで返済をする債務整理ですから、どこか任意整理と似ているように感じられる場合があります。
また、個人再生には偏頗弁済(特定の債権者だけを特別扱いして優先的に返済することを偏頗弁済(へんぱべんさい)といいます)についての規定がないというような説明もあったりしますので、「再生計画で決まった額さえきちんと返済すれば、友人等への借金は別に返済してもよいのではないか」と誤解されがちです。個人再生の場合であっても偏頗弁済があったことは、次のような形で問題とされます。
- 個人再生の申立てが棄却される
- 再生計画案が不認可となる
個人再生の申立てが棄却される
個人再生の申立ては、不当な目的で申立てがされたときや、申立てが誠実にされたものでない場合には、棄却されることになります。友人や親戚等の特定の債権者にだけ返済をしながら個人再生の申立てをした場合には、このことに該当すると評価される可能性があります。
再生計画案が不認可となる
裁判所に再生計画案を提出したが、裁判所がその内容を認めなかった(認可しなかった)場合を再生計画案が不認可となるといいます。この場合には、個人再生は失敗に終わりますので、借金は減りません。
再生計画案が不認可とされる場合には、再生計画案が遂行される見込みがない(返済される見込みがない)場合や、再生計画案に法律違反がある場合等がありますが、再生計画案の一般の利益に反する場合にも再生計画は不認可とされ、友人や知人等の借金だけを特別に返済することは、これに該当する可能性があるのです。
偏頗弁済があった場合の対応
個人再生の申立ての直前(申立ての1ヶ月前まで)に友人や親戚からの借金だけを返済してしまったという場合には、下の図のように、その偏頗弁済した金額を最低弁済額(清算価値)に上乗せした金額を返済する再生計画案を作成する必要があります。この措置がとられていない再生計画案は不認可となります。
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