破産手続きを利用するというと、なんだかこの世の終わりのような反応をされる方は少なくありません。たしかに、破産という言葉はそれだけイメージの悪いものです。
破産手続きは最も強力な債務整理の方法ですから、それだけの副作用(デメリット)の可能性はありますが、当然に破産によりメリットも存在します。破産しか選択肢がないというのではなく、破産だから救済される場合もあるのです。
目次
自己破産のメリットデメリット
破産手続きのメリットとデメリットをまとめたものが下の表になります
破産手続きのメリット
- 免責を受けることで、残った借金の支払い義務がすべて免除される
- 収入や財産がなくても利用できる
- 債権者の合意がいらない
- 破産手続きが開始されると債権者が取立てや強制執行をできなくなる
- 破産手続きが開始されると既に申し立てられている強制執行を停止させることができる
- 生活に必要な財産は差押えられずに手元に残る
破産手続きのデメリット
- 持家を残すことができない
- 所有自動車も原則として処分される
- 一定の職業制限がある
- 管財事件となったときには、通信と移動(旅行等)に制限がある
- 破産をしても免除されない債務がある
- 破産したことが官報に掲載される
- 破産したことがブラックリストに掲載される
- 連帯保証人・保証人に迷惑をかける
項目の数だけをみると、破産は、やはりデメリットが多いという印象を持たれてしまいそうですが、ブラックリストの問題や、免責されない債務(税金や罰金等)については、破産に限ったデメリットではありません。
また、持家・自動車・職業制限についても、借家住まいの方や自動車を持っていない方、制限に該当しない職業の方にとってはそもそも無関係な問題ですし、職業制限は一時的なものに過ぎません。さらには、通信や移動の制限についても破産手続きが終了すれば解除されますし、官報にいたっては通常の人はまず見ませんから、実はデメリットはほとんどないという方のほうが多いかもしれないのです。
以下では、これらのメリット・デメリットのうち特に重要な事項についてお話していきますが、一般的にイメージされているほど破産にはデメリットはないということは、頭にいれておいてください。
免責を受けることで、残った借金の支払い義務がすべて免除される
破産手続きの一番のメリットは、免責を受けることで、破産手続き後に残った債務の支払い義務が免除されることです。免責されない債務も一部存在しますが、金融機関からの借入の返済義務はすべて免除されます。これによって、借金のない生活に戻ることが可能となります。
収入や財産がなくても利用できる
破産は、強制的に清算をする手続きである点で、個人再生や特定調停、任意整理と明らかに異なる手続きです。破産以外の債務整理の方法は、手続きや和解の後に、「返済をする」ことが前提となる債務整理ですが、破産は手続き後の支払いを前提としていません。
あくまでも、破産手続きが開始された時点での、すべての財産とすべての債務との清算を行うのみです。したがって、破産手続きは、収入のない無職や専業主婦(夫)、返済の原資となるめぼしい財産がない場合であっても問題なく債務整理をすることができます。
破産手続きが開始されると強制執行を停止することができる
破産手続きが開始されると、債権者は債務者(破産者)に対する取立てを禁止されることは、弁護士や司法書士が任意整理のために受任通知を送付した場合や、特定調停・個人再生が開始されたときと同様です。破産手続き(と個人再生)が開始されたときには、それを超えて、既に開始された強制執行も停止されることになります。
生活に必要な財産は差押えられずに手元に残る
破産手続きでは、破産手続き開始決定の際に破産者(債務者)が所有していたすべての財産が債権者への配当に当てられることが原則です。しかし、個人破産の場合には、生活に必要な財産については除外されることになっています。具体的には、下記の財産が破産者(債務者)の手元に残ることが保障されています。
- 99万円までの現金
- 生活に必要な衣服、寝具、家具(テレビ、エアコン、冷蔵庫なども手元に残る場合がほとんど)
- 生活に必要な1ヶ月分の食料と燃料
また、破産手続き開始決定より後に破産者(債務者)が取得した財産(これを新得財産といいます)は、債権者への配当にも用いられませんから、破産者(債務者)の手元に残ることが認められています。これは、まさに破産が「新しいスタート」のための手続きであるためです。
持家や自動車(その他の高価な財産)を保持することができない
繰り返しになりますが、破産は清算を目的とした手続きですから、配当に回すことのできる財産は原則として処分されます。実際の生活との関係で破産することの最も大きなデメリットはおそらくこの点になります。しかし、個人破産の場合の免責には、「できる限りの返済をした」ご褒美という側面もありますから、これは仕方のないことです。なお、自動車については、登録から7年以上経過していて評価額が20万円以下の場合であれば処分されない場合もあります。
どうしても持家を残したいというときには、個人再生や任意整理等の「返済をする」債務整理を利用するか、親族等に買い上げてもらうほかありません。破産の際の持ち家の取り扱いについては、下記の関連記事で詳しくお話しています。
【関連記事】54.破産すると自宅・持ち家はどうなるか?絶対にやってはいけないこと
破産のデメリットにはデマが多い
破産というと身構えてしまう人が多いのは、そのイメージがあまりにも悪いからなのですが、それは、世間でよくいわれる「破産すると○○になる」といった間違った情報があまりにも多いためです。たとえば、以下にあげるようなことは、破産では起きませんので、誤った情報に振り回されないようにしてください。
- 破産すると選挙権や被選挙権がなくなる
- 破産すると破産したことが戸籍や住民票に記載される
- 破産すると家族(子供)の将来に悪影響が出る
- 外国人は破産できない
【関連記事】46.破産するとどうなるのか?影響のある職業とは
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