任意整理をするためには、弁護士や司法書士に債権者(貸金業者等)との交渉を依頼することが必要不可欠です。弁護士や司法書士に依頼するとなると「高い費用が発生するのでは?」と感じる方は少なくないと思いますが、実際にいくらかかるのか?ということをきちんと把握されている方は必ずしも多くないようです。
この記事では、任意整理を弁護士や司法書士に依頼するとどのくらいの費用がかかるのかということについてお話していきます。
目次
弁護士・司法書士報酬の内訳と相場額
弁護士や司法書士に支払う報酬の一覧を示すと下の表の通りになります
費目 | 説明 | 相場とされる金額 |
---|---|---|
相談料 | 相談の際に支払う費用 | 30分5000円という設定が伝統的。最近では60分単位で料金設定している事務所が増えています |
着手金 | 依頼のときに支払う、結果の成功・不成功にかかわらず発生する報酬 | 1~5万円。任意整理は着手金不要という事務所もあります |
基本報酬 | 依頼が成功したときに発生する報酬(固定報酬) | 債権者1社あたり2~3万円 |
成功報酬 | 依頼が成功したときに発生する報酬(歩合報酬) | 債務減額時には減額の10%ほど。過払い金が変換されたときにはその額の20~25%ほど |
その他 | 実費、日当等 |
ここでは、伝統的な報酬体系(報酬の費目)をベースに、相場とされている金額を記載していますが、現在は、弁護士報酬・司法書士報酬はどちらも自由化されていますので(以前は、日弁連・日司連が報酬基準を定めていました)、金額だけではなく、着手金不要の事務所から、すべて込みの報酬のみの事務所まで、かなりの違いがありますが、平均的な報酬例を挙げるとすれば、次のようになります。
着手金 ・・・ 2万円
基本報酬・・・ 3万円 × 5社 = 15万円
合計 17万円(+実費)
B司法書士事務所に債権者6社(債務減額・過払い金なし)の任意整理を依頼した場合
着手金 ・・・0円
基本報酬・・・2.5万円 × 6社 = 15万円(+実費)
おそらくこの金額は、多くの方が想像されているよりも安い金額なのではないかと思います。この後で詳しくお話しますが、弁護士に依頼する段階で支払う必要があるのは、このうちの着手金のみですから、ですから任意整理を始めるために必要となる費用は、みなさんが想像されている金額よりもかなり安いと思われます。
成功報酬(減額報酬)
任意整理の際に弁護士・司法書士に支払う報酬として、高額になる可能性のあるものは、成功報酬とか減額(回収)報酬とよばれる報酬です。この減額報酬は、一般的には、たとえば引き直し計算によって債務元金が100万円減った場合には、10万円というように、「債務が減額された場合にその10%程度」が相場の額とされています。
しかし、現在は、グレーゾーン金利が撤廃されたことに伴って、そもそも任意整理の場面では、債務が減額されることそれ自体がなくなりましたので、この減額報酬が発生することは、グレーゾーン金利(約年29%)が適用されている借入についての任意整理以外では、まずあり得ません。過払い金についても同様の理由で、現在の借入金のほとんどのケースでは既に発生しないものとなっています。
弁護士・司法書士報酬の支払い
この専門家報酬の支払いは、任意整理の場合であれば、積立金とか支払(弁済)積立金とよばれるような方法で支払うことが一般的です。「弁護士費用を積み立て?」と思われる方も少なくないかも知れませんが、要は、弁護士・司法書士の費用は分割払いで対応できますと宣伝している事務所の多くが採用している分割払いの方法を、積立金とか支払積立金とよんでいるということです。そのモデルは下の図のとおりになります。
ここでのポイントは、弁護士報酬(基本報酬)の支払いが、債権者への支払いが停止している期間に完了しているということです。ところで、この基本報酬は、成功報酬ですから、貸金業者との和解の交渉中のこの時期に弁護士が受領することはできません。ですから「弁護士が預かる」という形式をとります。ですから、「積み立て」という表現をするのです。なお、いわゆる込み込み料金の場合には、その報酬の性質によって扱いが変わります。詳しくは、この記事の最後の補足説明をお読みください。
弁護士への支払い額はこれまでの貸金業者への返済額よりも安い
このモデルでの毎月の支払い額は37,500円ですが、これを高いと考えるか安いと考えるかは、個人差があるかもしれません。しかし、このケースでは、債権者が6社ありますから、実際の債務額によって異なるところはありますが、一般的な最低弁済金の金額を念頭におけば、毎月の貸金業者への支払い額は6社合計で、最低でも6万円、このようなケースの場合であれば、毎月6社合計で10万円ほどの請求がきていることが一般的だと考えられますので、これまでの貸金業者への返済額と比べればはるかに安いのです。
それでも支払えないときには、法テラスを利用する
債務整理の依頼を受任する用意のある弁護士や司法書士であれば、依頼人である債務者の懐事情が厳しいことをよく知っています。ですから、弁護士・司法書士費用の支払いが依頼人の過度な負担とならないような配慮をしているのが普通です。先に説明した積立金方式がその1つの例です。
実は、この積立金の方法は、和解成立後に依頼人が本当に債務を返済し続けていけるのかどうかをテストするという意味合いも含まれています。ですから、弁護士・司法書士費用が分割払いとなったときには、これを延滞するようなことがあっては絶対にいけません。延滞によって弁護士・司法書士との信頼関係が壊れたときには、弁護士・司法書士が辞任することもあり得ます。
それでも支払えない場合――法テラスの立替払いを利用する
以上のような工夫によって、実際にも借金の返済に困っている多くの方が、弁護士・司法書士に任意整理を依頼して、債務整理を成功させています。それでも、債務者(あなた)の事情によっては、このような分割払いの方法でも弁護士・司法書士費用を捻出することが難しいというケースもあるかもしれません。
そのような場合であっても、依頼した弁護士・司法書士が法テラスの利用を持ち込む(持ち込み方式とよばれています)ことによって、弁護士・司法書士の報酬を法テラスが立て替えてくれる制度があります。この場合には、毎月1万円ずつの返済をすることが一般的です。
ですから、本当にお金がないという場合であっても、それで諦めるのではなく、「債務整理をお願いしたいのですが、そちらの事務所では法テラスへの持ち込みには対応していますか?」と問い合わせてみることで必ず借金から解放される道は開けます。なお、債務整理における法テラスの利用については、下記の関連記事もあわせてお読みください。
【関連記事】 14.債務整理にかかる「費用・料金」を専門家が徹底解説
【補足の説明】報酬費目による取扱の違いについて
すこし細かい話になりますが、お金の話は大事なことですので、補足の説明を加えておくことにします。上の図のケースでは、着手金と基本報酬(成功報酬)が区別されています。着手金とは、結果の成否にかかわらず支払われる報酬で、基本報酬は成功報酬ですから依頼が成功した(債務整理の場合には和解が成立した)場合に支払われる報酬ということになります。
着手金と成功報酬の違い
ですから、着手金の2万円については、委任契約の締結の時点で「受領」されますが、その後毎月支払う(積み立てる)37,500円については、基本報酬(成功報酬)ですから、依頼が成功に終わる(和解成立)まで弁護士は受領することができません。この分割で積み立てている金額については、万が一、和解が成立しなかった場合には返金してもらえます。
いわゆる「込み込み」の場合の取扱い
しかし、債務整理の場合には、最近ではいわゆる「込み込みで○○万円」という報酬を打ち出している事務所が増えてきました。そのような場合であれば、この37,500円が着手金としての性質を持つものなのか、基本報酬(成功報酬)としての性質を持つものなのかで、弁護士が受領できるかどうか(和解が成立しなかった場合に返金してもらえるかどうか)が変わってきます。
実際には「込み込み」設定をしている弁護士や司法書士に直接聞いてみなければわからないのですが、一般的には成功報酬というよりも着手金の分割払いという取扱いになっていることが多いと思われます(その方が弁護士・司法書士にとって有利だし便利だからです)。
仮にこの「込み込み」料金が着手金であるのならば、仮に和解が成立しなかった場合でも返金してもらえないことになりますし、成功報酬であれば、和解が成立しなければ返金してもらえますし、両方が混ざったものであるのならば、一部返金ということになります。
費用についてわからないことは遠慮せずに質問しましょう
なお、仮に弁護士や司法書士からその点について説明がないようであれば、「この金額は、着手金(失敗しても返してもらえない報酬)と、成功報酬(失敗したら返してもらえる)のどちらなのですか?」と委任契約を締結される前に、質問しておくと良いと思われます。
わからないことを質問しなかったがために、弁護士・司法書士とその報酬をめぐってトラブルが起きるというケースは、実は少なくありませんし、それが弁護士や司法書士に対する苦情や懲戒といった事態に発展することも珍しくありません。
お支払いになる報酬について、何か不安な点があるときには、遠慮することなく質問されておくことが、後々にトラブルとなることを防止してくれます。お金のことは質問しづらいと思われるとは思いますが、お金のことだからこそ、正しく理解して納得してから支払うことが大切です。
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