この記事では、「破産手続きの開始」についてお話していきます。破産は申し立てれば即手続きが始まるというものではありません。また、破産手続きが開始されたときには、さまざまな法的な効果が発生します。
目次
破産手続き開始
破産手続きは、強力な清算手続きですから、破産させるべきではない人に対して手続きが始められるわけにはいきません。そこで、破産の申し立てがなされたときには、本当に破産手続きを開始させて良いかどうかの審査をします。
破産手続き開始の要件
破産手続きを開始させるためには、債務者が、財産不足のために、いま支払わなければならない債務(法律用語では弁済期の到来した債務といいます)を、確実に返済できないという状態にあることが必要となります。このような状態のことを支払不能とよんでいます。
破産が申し立てられた場合いは、裁判所は、申し立て時に提出された書類や審尋(裁判官が債務者に質問をするための期日)の結果から、破産手続きを開始すべきかどうかについて判断することになります。
破産の審尋
この破産の審尋は、弁護士代理人による自己破産の場合には、通常は開かれません。破産手続きを申し立てたという代理人弁護士の判断にはそれだけの信用があるということです。仮に審尋が開かれたとしても代理人弁護士が期日に出席するのが一般的です。
弁護士代理人のいない本人申立ての場合には、破産申立人(債務者であるあなた)が裁判所での審尋に出席する必要があります。破産申立人の財産状況、負債状況によっては、支払不能とはいえないとして、破産申し立てが認められないこともあり得ますが、貸金業者等への返済が滞っている状態があれば、破産の申立てが認められます。
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破産手続き開始決定
破産申立人(債務者)が支払不能であると認められたときには、裁判所は、破産手続開始決定をします。この破産手続開始決定というのは、以前は「破産宣告」とよばれていたものです。2004(平成16)年に破産法が改正された際に、「破産宣告」という名称があまりにも負のイメージが強すぎるということで、「破産手続開始決定」と名称が改められました。ですから、いまでは「破産宣告」という言葉は使われません。
破産手続きが開始されたことによる法律上の効果
破産手続きが開始されると、次のような法律上の効果が発生します。
- 破産管財人が選任され、破産者の財産の管理処分権が破産管財人に専属する
- 破産者に破産者としての義務が発生する
- 破産債権者は、破産手続きによらないで権利行使することができなくなる
- 破産(者となったこと)により一定の職業が制限される
- 破産をしたことが官報に公告(掲載)される
破産管財人の選任
破産手続きは、破産者のすべての財産ですべての破産債権者の債権について平等に返済するための清算手続きです。この清算のために必要な手続きを行うのが破産管財人とよばれる人です。裁判所に登録されている弁護士が就任します。
破産者の財産を破産者が使用したりしているとそれを換価する際の妨げになりますから、破産手続きが開始されると破産者の財産は破産管財人の管理下におかれることになります。したがって、破産者が自分の財産を勝手に処分することはできなくなります。
破産者に破産者としての義務が発生する
破産手続きが開始されると、破産手続きを円滑・適正に行うために、破産者にはいくつかの義務が発生します。破産手続きによる清算を正しく行うためには、破産者の財産と債務の状況を正しく把握することが必要不可欠です。そのために、破産者には、説明義務や財産を開示する義務が発生します。
さらに、説明義務を果たさせるためには、破産管財人が破産者の居所を把握しておく必要がありますから、破産者の移動(転居や長期の旅行)が制限されます。また、財産調査のために、破産管財人は、破産者宛の郵便物を破産管財人のところに転送させ、その郵便物を開封・閲覧(調査)することができますので、破産者の通信の秘密が制限されることになります。
破産権利者の個別での権利行使が禁止される
破産手続きが開始されると、破産者に債権をもっている者(破産債権者)は、個別に権利行使(返済を受けたり、強制執行を申し立てたり)することが禁止されます。破産手続きでは、同種類の債権は平等に取り扱われることになりますから、債権者が抜け駆け的に権利行使をしたのでは、それが害されることになるからです。法律用語では別除権といいますが、抵当権者等の担保権者は、例外的に破産手続きによることなく個別にその権利を行使することができます。
資格等の制限
破産手続きが開始され破産者となることによって、一定の資格や職業が制限される場合があります。職業が制限されるといっても、すべての職業が対象となるわけではありません、一般的には、士業とよばれる資格者や、お金や不動産を取り扱う仕事、特に経済的な信用が重視される仕事等がその対象となります。主な例を挙げれば、次の資格や職業に制限がかかります。
また、資格の制限のされ方にも違いがある点で注意が必要です。たとえばいわゆる士業とよばれる資格の場合には、破産することで、資格を持っていても復権までの間はその資格を使うことができません(資格者としての一切の仕事ができなくなります)。
他方で、生命保険募集人(外交員)の場合であれば、破産手続開始のときから復権のまでの間は新たに登録することはできませんが、既に登録されているときには、保険会社がその登録を取り消さない限りは、保険外交員として仕事をすることが可能です。
【関連記事】57.破産すると影響を受ける職業とは?士業・生命保険外交員・警備員
官報への公告
破産手続きが開始されるとそのことが官報に掲載されます。官報は国が毎日発行している機関誌で、新たに制定された法律等、国として重要な事項についての広報と公告(広く国民に伝えること)を目的としている冊子です。破産者(あなた)について破産手続きが開始されたことが官報に掲載されるのは、債権者の保護のためです。しかし、一般の方が官報を調べるということは、まずありませんから、官報への公告が何かしらの不都合を生じさせることは、通常ではありません。
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