借金を抱えていることは誰にも知られたくないものです。ましてや、借金を返せなくても困っているということは、なおさら誰にも知られたくないものです。債務整理をしたいけれど、家族や勤め先に借金していることが知られてしまうのではないかという不安から債務整理を踏みとどまる人は実際にも少なくありません。
結論からいえば、任意整理によって借金の事実が家族や勤め先等に知られるリスクは高くありません。この記事では、なぜ知られないのか、どのような点に注意すれば知られずに済むのかということについてお話していきます。
目次
弁護士・司法書士や貸金業者が借金の事実を他人に知らせることは禁止されています
まず、大前提となるところから確認していきましょう。任意整理にかかわる登場人物は、債務者(あなた)のほかには、債権者(貸金業者)と債務者の代理人となる弁護士・司法書士、それに弁護士・司法書士事務所のスタッフです。
この登場人物のうち、債務者本人を除いたすべての者は、「あなたが借金している事実を他人に知らせること」を禁止されています。弁護士・司法書士とその事務所スタッフには、守秘義務がありますし、債権者である貸金業者は、貸金業法や金融庁のガイドラインによって、顧客である債務者が借金している事実を他者に知らせることを禁止されています。
弁護士・司法書士や貸金業者からの連絡は、まずあなたの携帯電話にされます
現在では、ほとんどの人が携帯電話をもっています。したがって、弁護士・司法書士(事務所)や貸金業者があなたに連絡をする必要のあるときは、まずあなたの携帯電話宛てに電話をすることが一般的です。それが一番確実にあなたと連絡の取れる合理的な方法だからです。
借金の返済が延滞したときの督促も、原則としてあなたの携帯電話宛てになされますから、あなたがその電話に応対している限りは、通常の貸金業者であれば、それ以外の方法であなたに連絡を取ることはありません。
【関連記事】 04.借金で貸金業者からくる督促の5つのステップと対応方法
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すると、連絡窓口は弁護士・司法書士になります
弁護士・司法書士に債務整理を依頼すれば、その代理人となった弁護士・司法書士から債権者に対して「受任通知」とよばれる文書が送付されます。この受任通知を受け取った時点から、債権者は、あなたに直接連絡を取ることが禁止されます。
したがって、弁護士や司法書士に債務整理を依頼した方が、債権者(の督促行為)を通じて、借金している事実が家族や勤め先にばれてしまうことを防げるということになります。
ポイント実際に、家族や勤め先に借金の事実がばれてしまう一番の原因は、債務者が債権者からの携帯電話宛ての連絡に応じることなく逃げ回ったために、やむなく郵便物を送付したり、勤め先に連絡したりする場合であることは、知っておくべきでしょう。
債務整理を依頼しても知られることはありません
弁護士・司法書士に債務整理を依頼した後は、弁護士・司法書士と債権者(貸金業者等)との話し合いになりますから、債務者自身がそれにかかわることはありませんし、勤め先と関わりのある債権者(共済・労金・給与振込先の金融機関)が任意整理の相手方となっていない限りは、勤め先に借金の事実が知られるということはありません。
(他からも)借金のある事実を勤め先に知られたくないのであれば、当然勤め先につながる債権者は任意整理の対象から外すことで対応します。
銀行系カードローンや家族カードがある場合には注意が必要です
勤務先の場合と同様に、家族と共用している銀行口座やクレジットカード(家族カード等)がある場合に、その銀行(系カードローン)やクレジットカード会社を任意整理の相手方とすれば、銀行口座が凍結されたり、家族カードが利用停止になったりすることで、借金の事実が家族に知られてしまうということは起こりえます。
この場合も予め弁護士・司法書士に家族に知られたくない、家族と共用している口座やクレジットカードがあるということをしっかり伝えておけば、適切に対応してくれるものと思います。任意整理の場面で家族や勤め先に借金の事実が知れてしまう原因の大半は、依頼人の弁護士や司法書士への伝達ミスによるものです。
弁護士・司法書士からの書類の交付は事務所で受け取る
この段階で、特に家族との関係で借金の事実がばれてしまう可能性があるとすれば、弁護士・司法書士事務所から何かしらの郵便物が届くという場合くらいです。これも、任意整理の場合であれば、依頼人(あなた)が何かしらの書類を弁護士・司法書士に郵送することはあっても、弁護士・司法書士からあなた宛てに何かしらの書類が送付されるということは、まずありません。
書類等の交付を受ける必要がある際には、あなたが弁護士・司法書士事務所に出向いて受け取る等の対応をとれば、何も心配もありませんし、そもそも弁護士・司法書士事務所は、家族に知られたくないという依頼人の事情に慣れていますから、あらかじめその希望をきちんと伝えておけば、その都度適切に対応してもらえます。
債務整理をすることがばれないための予防策
ここまでお話してきたように、弁護士や司法書士に任意整理を依頼することで、借金の事実が家族や勤め先に知られてしまうということは、まずありません。むしろ、いま現在で、借金の返済が滞っていることを前提にすれば、弁護士や司法書士にできるだけ早い段階で債務整理の依頼をすることが、家族や勤め先に借金の事実を知られないための一番の予防策であるということもできます。
むしろ、借金の事実がばれてしまうのではないかということをおそれて対応が遅くなることで、債務額膨らんでしまえば、これとは逆に家族や勤め先に隠し通すことが難しくなっていきます。
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