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自己破産すると生命保険を解約しなければならないのか?

生命保険は、突然の病気に対応するためには、非常に重要なものです。しかし、自己破産するときには、生命保険を解約する必要があるのが原則です。

若い方の自己破産であれば、自己破産後に再加入すれば良いのでしょうが、既往症のある方や、高齢の方の自己破産では、再加入できない場合もあります。そのため、「生命保険は解約できない」からと自己破産を躊躇して、借金の問題がより深刻になってしまう方もいらっしゃいます。

現在では、自己破産しても保険を解約しなくて済むケースがあります。この記事では、自己破産した場合の生命保険の取扱いについて説明していきます。

自己破産で問題となるのは「解約返戻金」

自己破産した場合には、「自由財産」以外のすべての財産を債権者への配当のために拠出しなければなりません。この自由財産は、「新得財産」と「差押禁止財産」です(詳しくは、下記の記事をお読みください)。

積立型の生命保険には、「解約返戻金(かいやくへんれいきん)」があります。これは、生命保険を「解約した際に戻ってくるお金」のことです。自己破産(や個人再生)では、破産者(再生債務者)が「契約者」となっている保険の解約返戻金が問題となります。

解約返戻金は契約者に支払われるものですから、破産者が「被保険者」、「受取人」に過ぎない場合には、問題とはなりません。

なお、「掛け捨て型の生命保険」であれば解約返戻金のないものがほとんど(解約返戻金があってもごく少額)なので、自己破産で問題となることはありません。

ポイント

この記事では「生命保険」を取り上げていますが、生命保険に限らず、傷害保険・自動車保険・火災保険・地震保険・学資保険など、「解約返戻金のある保険」はすべて同じ扱いになります。

解約返戻金請求権は破産財団に組み込まれる

解約返戻金(請求権)は、自己破産した時点では「まだ入手していない財産」です。しかし、破産法34条2項は、「破産者が破産手続き開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する」と規定しています。

簡単にいえば、「まだ入手していなくても、その財産を取得する原因が自己破産前に発生している財産」は、「債権者への配当のために拠出する」ということです。そのため、解約返戻金や退職金は、債権者に配当するための資産として取り扱われることになります。

なお、生命保険と似た取扱いを受けるものには、退職金があります。自己破産における退職金の取扱いについては、下記の記事をお読みください)。

解約返戻金が「20万円を超えるかどうか」がポイント

理屈だけをいえば、解約返戻金は「金額を問わず」破産財団に組み込まれます。しかし、破産手続きの中で、解約返戻金請求権を換価(現金化)するには、破産管財人を選任して生命保険を解約する必要があります。破産管財人を選任すればその費用がかかります。

そこで、東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所は、「解約返戻金の見込み額が20万円を超える場合に限って換価する」という運用をしています(それぞれの裁判所での運用方針については、弁護士・司法書士に確認してください)。

解約返戻金が複数あるときには、「すべての解約返戻金の合計」が20万円を超えれば換価の対象となります。たとえば、「A保険9万円、B保険7万円、C保険5万円」という場合には、それぞれは20万円以下ですが、「合計21万円」なので、管財事件となり破産管財人が保険を解約します。

なお、解約返戻金の金額は、契約している保険会社に「解約返戻金証明書」を発行してもらうことで調べられます。

自己破産直前でなければ解約はOK!ただし解約返戻金の使い道に注意

自己破産についての知識のある方であれば、「20万円以上の解約返戻金がある生命保険は解約される」と聞くと、「あれ?」と思うはずです。

現金であれば、99万円までは「差押え禁止」なので、手元に残せるからです。要するに、「自己破産前に解約」した方が良いのではないか?ということです。

自己破産前に生命保険を解約する際のポイントをまとめると次の通りになります。

  • 自己破産「直前」の解約はダメ(解約しても保険として扱われる)
  • 「直前」ではない解約は問題ない
  • 自己破産前2年以内に解約した解約返戻金の使途は、裁判所に調査される

多くの裁判所では、「危機時期より後に保険を解約した場合」には、解約返戻金は「現金ではなく保険」として取り扱われます。一般的には弁護士に債務整理を依頼した後であれば確実に「危機時期」と評価されます。ただし、弁護士に依頼する数日前の解約であればOKかといえば、そうではない場合もありますから注意が必要です。

危機時期以前であれば問題なし

危機時期以前であれば保険の解約は問題ありません。しかし、自己破産する際には、「過去2年以内の保険の解約」は申告しなければいけません。保険の解約を隠すことは「財産隠匿」になります。

【関連リンク】
自己破産申立て時に裁判所に提出する資産目録の書式(裁判所ホームページ)

また、「解約返戻金の使い道」は、裁判所に調査されます。たとえば、解約返戻金で「特定の債権者にだけ返済した」ということであれば、「否認対象行為があるケース」として財産がなくても管財事件となる可能性があります。

解約返戻金を「生活のためにとってある」とか「弁護士費用に用いた」というのは、問題ありません。

名義変更はダメ!

生命保険を名義変更すれば、「解約返戻金は他人の資産」となります。しかし、自己破産前の名義変更は「典型的な財産隠し(詐害行為)」ですから、絶対にしてはいけません。財産隠匿は「免責不許可事由」に該当します(破産法252条1項1号)。

生命保険には、「契約者は破産者」だけど「保険料の負担は家族」というケースもあります。しかし、その場合でも「契約者」は破産者ですから、除外されません。

裁判所は通帳の記録や源泉徴収票などから「お金の流れ」を徹底的に調査します。必ず正直に申告しましょう。

自己破産しても生命保険は再加入できる

生命保険に加入することは、「借金ではありません」。したがって、生命保険加入の際に「自己破産・債務整理の有無」が調査されることはありません。したがって、若い方・健康に問題のない方であれば、生命保険のことをあまり気にする必要はないでしょう。

しかし、既往症のある方、高齢の方のように「再加入が難しい」場合や、「現在保険を利用している場合」では、生命保険を維持できるかどうかは、重要なポイントになります。

自己破産しても生命保険を解約せずに済む方法

任意整理・個人再生では、生命保険の解約は不要です。個人再生では、解約返戻金の金額は「清算価値」に算入されますが、保険の解約は不要です。

自己破産の場合でも、次の方法で解約せずに維持できる場合があります。

  • 「契約者貸付」を利用する
  • 「任意弁済」・「介入権」を利用する
  • 「自由財産の拡張」を認めてもらう

「契約者貸付」を利用する

解約返戻金のある生命保険に加入している場合には、「契約者貸付」を利用できます。契約者貸付を利用することで、「解約返戻金を20万円以下」にすれば、生命保険を解約せずに済みます。

「契約者貸付」は、「解約返戻金の一部前払い」という扱いになるので、生命保険会社は破産手続きの債権者とはなりません。ただし、契約者貸付を受けたことは、自己破産を申立てる際に申告します。危機時期前に破産した場合と同様、契約者貸付によって得たお金の使い道は裁判所に調査されます。

「任意弁済」・「介入権」を利用する

わかりやすく言えば「解約返戻金相当額を支払う」ことで保険の解約を免れる方法です。破産者自身が「自己破産後の収入」や「自由財産として手元に残った現金」から「解約返戻金相当額」を破産手続きに拠出する方法を「任意弁済」といいます。ただし、「任意弁済」は裁判所によっては認めてもらえないケースがあります。

これに対して「介入権」は、「保険金受取人」が契約者の同意の上で、「解約返戻金相当額」を支払うことで、保険の解約を阻止できる権利のことをいいます(保険法60条・89条)。ただし、介入権を行使できる保険金受取人は、次の者に限られます。

  • 保険契約者の親族
  • 被保険者の親族
  • 被保険者本人

たとえば保険金受取人が「内縁関係」である場合には、介入権は認められません。また、保険契約者にも介入権は認められません。

自由財産の拡張を認めてもらう

生命保険の解約は多くの場合、「契約者貸付」、「任意弁済・介入権」の方法で回避可能です。しかし、これらの方法がとれない(お金を積めない)場合であっても、「保険契約を継続する必要性」、「破産社の資力状況」を考慮して、自由財産の範囲を拡張してもらえる場合がないではありません。ただし、これは「かなり例外的な対処法」です。

独断で判断せず弁護士・司法書士のアドバイスを受けてください

自己破産すると「解約返戻金のある生命保険」は解約するのが原則です。しかし、ここまでお話してきたように、解約を回避して生命保険を維持する方法はたくさんあります。

実際にも多くの方が「生命保険を解約せずに」自己破産できています。

しかし、自己破産における生命保険の取扱いは複雑です。法律知識のない方が独自の判断ですることは、絶対におすすめできません。弁護士・司法書士に必ずアドバイスを受けるようにしてください。



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