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夫婦ペアローンの場合の個人再生・債務整理について解説

共働きの夫婦が増えていることを受けて、「ペアローン」で住宅を購入する人が増えています。ペアローンには、夫婦揃って所得税控除を受けられたり、融資可能額が増えたりと、メリットがあるためです。

住宅ローンを抱えた方が借金の返済に行き詰まった際には、「住宅ローン特則付きの個人再生」を利用することで、購入した自宅を手放すことなく、その他の借金を返済できます。しかし、個人再生手続きは、ペアローンの普及を想定してない法律です。そのため、ペアローンを組まれた方が個人再生を利用する際には注意が必要です。

なお、住宅ローン特則については、下記の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

ペアローンについて確認しておきましょう

住宅ローンの組み方には、大きく次の3つがあります。

  • 1人(夫・妻のみ)で借り入れる
  • 夫婦の収入合算(連帯保証・連帯債務)で借り入れる
  • 夫婦がそれぞれ別々に借り入れる

ペアローンは、上記のうちの最後の形態をいいます。都市部の住宅を購入する際に、1人の収入だけでは希望額を借り入れられないケースなどで利用されます。

これと似た借入方法に、「収入合算」で借り入れる方法がありますが、法律的には全く違うものです。ペアローンでは、夫婦がそれぞれ別に「住宅ローンの契約」と「抵当権の設定」をします。ペアローンでは、下記のように不動産登記簿に2つの「抵当権設定」があります。

抵当権設定 平成○年
△号
債務者
抵当権設定 平成○年
×号
債務者

住宅ローン特則の原則ルール

住宅ローンを抱えた方が、返済に行き詰まったときには、「住宅ローン特則付きの個人再生」を利用することで、住宅を手放さずに借金を返済することができます。しかし、住宅ローン特則には、いくつかの利用条件があります(詳しくは、下記の記事をお読みください)。

住宅ローン特則の利用条件のうち、ペアローンとかかわるのが、.民事再生法198条1項ただし書きです。条文は、次のように書かれています(読みやすくするために括弧書きを省略しています)。

住宅資金貸付債権については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第53条第1項に規定する担保権が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に第53条第1項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

民事再生法53条1項が規定する担保権とは、「特別の先取特権」、「質権」、「抵当権」、「商事留置権」のことをいいます。

要するに、住宅ローン特則の対象となる不動産に、「再生債務者(申立人)の住宅ローン以外の抵当権」が設定されているときには、住宅ローン特則を利用できないのです。

冒頭で説明したように、ペアローンでは、「住宅ローン契約が2つあり、抵当権が2つ設定される」ことになります。したがって、「夫(妻)が個人再生する場合には、妻(夫)のローンの抵当権がある」ために、住宅ローン特則を利用できないのです。

なお、「収入合算」の場合には、契約は1つで抵当権も1つですから、民事再生法198条1項ただし書きは問題となりません

なぜ住宅ローン以外の担保が設定されていてはいけないのか?

担保権は「優先弁済権が認められている」非常に強力な権利です。担保権者は、自己破産や個人再生が開始されても、「優先して返済を受ける」ことができます。これを別除権といいます。

したがって、全ての債権者を対象としなければならない個人再生では、住宅ローン以外の担保権者がいたときに、その担保権実行(競売)を阻止できません。担保権実行が阻止できない以上、住宅は処分されますので、住宅ローン特則を利用させる意味がないということになります。

住宅ローン以外の担保権が設定されているケースの典型例は、「不動産担保ローンで借金をしている場合」です(下記の記事で詳しく説明しています)。民事再生法198条1項ただし書きの規定は、主として不動産担保ローン等を念頭においています。ペアローンは個人再生が立法されたときには、そもそも想定されていなかった問題なのです。

東京地方裁判所・大阪地方裁判所での運用

個人再生手続きは、バブル経済崩壊後に訪れた「住宅ローン危機」に対応するために立法された経緯があります。つまり、「住宅を手放さずに借金を返済させる」のが個人再生の目的といえるのです。

また、ペアローンは、住宅を買いやすく、住宅ローンを返済しやすくするための仕組みですから、ペアローンを利用すれば住宅ローンを利用できないというのは、困った結論になってしまいます。

そこで、東京地方裁判所大阪地方裁判所では、ペアローンの場合には、「夫婦が共に」個人再生を申し立てるのであれば、住宅ローン特則を利用可能とする運用をとっています。

東京地方裁判所・大阪地方裁判所での実務運用(ローカルルール)は、他の地方裁判所へも浸透していくことがほとんどです。しかし、法律の解釈としては「ペアローンでは住宅ローン特則は利用できない」のが原則です。

現時点で、必ずしも全ての裁判所で上記の運用が認められているわけではありません。お住まいの地域の裁判所の対応については、弁護士・司法書士に必ず確認してください。

単独申し立てでも可能な場合も

夫婦が共に個人再生を申し立てたとしても、「配偶者の片方には、住宅ローン以外の借金がないケース」では、個人再生の申立ては、「住宅ローン特則を利用するための形式にすぎない」ことになります。

住宅ローン以外に借金がないケースでも、「住宅ローン特則付きの個人再生」を利用することはできます。たとえば、「期限の利益の回復」や、「返済期間の延長」を目的に利用することがあります。しかし、「他に借金のない配偶者の住宅ローンはそのままで良い」というケースでは、手続きを実施する手間や費用が無駄となります。

そのため、東京地方裁判所・大阪地方裁判所では、「他に借金なし」・「住宅ローンそのまま」の場合には、配偶者の片方だけの申立てであっても住宅ローン特則を認めてくれることがあります。

ペアローンの個人再生は非常に複雑!必ず弁護士に相談しましょう

ペアローンでの住宅ローン特則の利用は、あくまでも「運用」に過ぎません。条文上は、「ペアローンでは住宅ローン特則を使えない」のが原則です。

したがって、法律知識のない方が、ご自身のケースについて独自に判断すべきではありません。現在では、「ペアローンでも住宅ローン特則を使えるようにする」という傾向になっていますが、「あなたのケースは違う」と言われる可能性もあるからです。

また、ペアローンを解消するには、「片方のローンの一括返済」、「1人名義での借り換え」、「連帯保証人を追加で設定する」といった選択肢がありますが、簡単なことではありませんし、時間がかかります。

借金の問題は処理に時間を要するほど深刻化します。できるだけ早く弁護士・司法書士に相談され、ベストの解決作を見つけることが重要です。



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